1990 Fender Vintage Series '52 TELECASTER
2002年の夏、渋谷の線路沿いにあるG'Seven Guitarsに立ち寄った際、このギターが目を引いた。他のテレキャスターよりもはるかに安値で売られていたこのギターは、その時にはすでにボディ、指板とも薄ら汚れていて、フレットもかなり減っていたので、店の商品群の中ではあまりお薦めではなかったようだ。しかし、TOTOのスティーブ・ルカサーの大ファンである私の目に真っ先にとまったのは、そこに付けられていたEMGピックアップ。EMG自体は大して貴重なものでもないが、それがテレキャスターに付けられているというのが、どうも気に入ってしまって、試奏させてもらうことに。弾いてみて分かったことは、まずアンプを通す前の音が良い!そしてアンプにつないでもやっぱりいい!EMGはテレキャスターによく合うと思う。音のキレが良く、クリーントーンで弾くとパリンパリンという感じ。アンプ直つなぎでもボリュームを上げるだけでクランチがかかるような。そこにディストーションをかけると更にパワーが強調されて凄まじい音圧になる。本来テレキャスターを好むオールドギター派の人々にとっては電池を使ったアクティブ・ピックアップなんて邪道、というイメージもあるかも知れないが、これって全然悪くないと思う。むしろFenderが出してもいいと思うのだが。
10万円未満で買ったギターとは思えない貫禄がある。お店では何も教えてくれなかったのだが、調べたところ、これは90年に制作された当時の企画物で、ビンテージ・シリーズの中の52年タイプ。リイシューのように完全な復刻版ではないがネックの太さやヘッドストックの形状、Fenderのロゴも一応当時のものを再現してある。しかし、おそらく以前の所有者が元の塗装の上に更に塗装を重ね、黄色っぽさが増してしまっている。また、ブリッジも元々の3連サドルのものから、6連のFender純正パーツに交換されている。ビンテージ・シリーズでは本来ブリッジプレートに「FENDER PAT. PEND」の文字とシリアルナンバーが刻印されているはずなので、交換されたときにこのギターからシリアル番号が消え去ってしまった。そういうわけで、結局このギターの出所を知るためには、ネックを外して、接合面に記されている製品名と制作年月日を見る必要が生じた。普段ギブソンのギターを使っていると、ネックが簡単に外れるのってやはりすごいなと思う。
元の塗装に新たなポリ系塗料を重ね塗られてしまったことによって、しかもそこにタバコの脂が絡まって、このギターの表面もたいへんなことになっていた。しかし、これもやはりmusicmanと同じくHistory社の研磨剤できれいに復活。色も少し鮮やかになった気がする。それでもどうしようもない状態だったのがこのネック。しばらく放置していたことで、表面塗装がデロデロ状態になり、ネックを握るともれなく指紋が付く有様。そこで、根岸線山手駅そばの ELMOREさんにリフィニッシュをお願いすることにした。結果は見ての通りで、見た目は元の塗装が黒ずみすぎていたせいで境目がくっきりしているが、オイルフィニッシュにしてもらったことで、格段に弾き易くなった。頼んでよかった!そして、フレットと弦高も調整してもらった。フレットはかなり減ってしまっているのでチョーキングをするにはきついが、バランス、音ともかなり良くなった。
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